ベルリンの壁
第二次世界大戦のドイツ降伏(1945年)により、ドイツは米・英・仏・ソの4カ国による分割
占領、1948年~49年ソ連による西ベルリン封鎖などを経て、1949年5月にドイツ連邦共和
国(西ドイツ)が成立、同年10月にドイツ民主共和国(東ドイツ)が成立した。
西ドイツと東ドイツの国境線は、ベルリンから可なり離れた西の方にあって、鉄条網はあって
も壁はなかった。
西ベルリンは、米英仏の占領地域で、西ドイツ本土とは、途中停止が禁止されたアウトバー
ン、途中下車が禁止された鉄道、米英仏の空路で結ばれていた。
「ベルリンの壁」は、西ベルリンを包囲するため、ドイツ民主共和国(東ドイツ)政府によって
1961年に建設された。(東ドイツが東西ベルリンの交通を遮断)
1972年 東西ドイツが双方の主権と国境を認める「基本条約」に調印。
1989年 ベルリンの壁崩壊、東西ベルリンの行き来が完全に自由化。
1990年 ベルリンの4カ国占領が正式に終了・東西ドイツの統一。
東西ドイツが統一されるまで、この壁がドイツ分断、ベルリンの封鎖、冷戦の象徴となった。
「ベルリンの壁」に絡んだ余談
旧東ドイツからの商談で、1974年(壁建設の13年後)に西ベルリンから東ベルリンへの入国の
折には、東ベルリンの検問所で非常に厳しい取調べをうけた記憶があります。
当時、ホテルは西ベルリンで、毎日、東ベルリンの打ち合わせ会場までタクシーで通っていた
ので、都度、検問所で検査を受けることになっていました。
検問所に着くと、タクシーの運転手と一緒に車から降ろされ、荷物と身体検査、更には、車の
後部座席を車外へ取り外し、また床下には鏡をかざして、人(逃亡者)、物の徹底検査がなさ
れた。周りの建物の窓からも、幾つもの銃口が向けられていました。
現地の出迎えの方から、決して勝手に動かないようにとのことで、検閲後無事にタクシーに乗る
まで緊張していた覚えがあります。不用意に走ったり、辺りを見渡したりする挙動不審者には、
即、銃口が火を噴くとのことでした。
東ベルリンから西への逃亡防止と西ベルリンからの余計な物資の持込を厳重に取り締まって
いたようです。
東・西ベルリンの境界線上の壁と、東側には更に壁が設けられ、壁と壁の空間には無人緩衝
帯(幅数十メートル)がありました。
東・西ベルリンの境界線上の壁は、建物の一部を利用した構造で、無人緩衝帯と東ベルリンと
の間の壁は、コンクリート製の頑丈な構造のようでした。
本スライドショーに掲載の「ベルリンの壁」は、無人緩衝帯と東ベルリンの間のコンクリート壁(
高さ3~4m、厚さ15~30cm)の一部です。
なお、1989年の壁崩壊時には、ブランデンブルグ門の前の壁の上に立って、大勢の人々が
ハンマーなどで壁を破壊する様子が連日報道されていましたが、この辺りの壁は特に頑丈に
作られており、厚さが1~2mもあったようです。
無人緩衝帯には、警報装置への信号ケーブルと対人地雷が敷設され、見通しの良い空間で、
ここを通っての逃亡はまず不可能ではないかと感じました。
それでもここから脱出を試みる人が後を絶たなかったようです。
東ベルリン検問所での体験から約16年後に、壁の崩壊と東西ドイツが統一され、世界の冷戦
も終わりを告げました。
ドイツ統一から数年後に、旧東ドイツの顧客を日本に迎えることになり、設計の職場を案内
するなど友好的な交流が行えるようになりました。
機械系の技術では、当時の西ドイツは自他共に認める世界の先進技術立国なるも、東ドイツ
の技術は、日本と比較してもかなり遅れていたように思います。
統一後のドイツ企業は、流石に、国際入札でも強力なコンペティターとなり、また、良きパー
トナーともなりました。
ドイツは、EUの経済優等生、安定した民主国家、伝統の文化・芸術、環境先進国、世界的人
気車(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン)などEUの頼れるリーダ的存在
で、強い存在感があります。人口は8200万人で、EUの中で最大。最近の報道では、ドイツは武
器輸出世界第3位(金額ベースで、1位は米国、2位はロシア)のようですが、政治的な評価は
別として、ここでもハイレベルの技術力が伺えます。
2014FIFAワールドカップでは、世界中が注視する中、技術と組織力で他を圧倒し、
見事に優勝しました。
広島では、8月6日、69回の「原爆の日」を迎えた。広島平和記念公園で平和祈念式典が開か
れ、被爆者や遺族、総理、68カ国の代表、ほか約4万5000人の参列者が犠牲者を悼んだ。
ドイツの「ベルリンの壁」と日本の「原爆ドーム」は世界第2次大戦の貴重な「負の遺産」として、
戦争の残酷・悲惨さと平和の有難さを心に刻み、未来永劫の平和を願いたいものです。
(2014年8月)
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