スペイン・車窓の雑感

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スペイン旅行の車窓から、平原の太陽光発電パネルや丘の上の風力発電の
風車がひと際目に付き、ラ・マンチャの風車群(粉挽きの動力)の現代版のよう
で、スペインは昔から自然エネルギーの利用に積極的であったのであろうか。
特に、ガス・石油などのエネルギー資源の大部分を輸入に依存している背景も
あるにしても、早い時期から国・国民の一体となった取り組みが再生可能エネ
ルギー利用の先進国に推し進めたのであろう。
(スペインでは風力発電が21%で、原子力を抜き電力供給のトップの座となっ
ているという)
    スペイン        日本
 風力   21%        0.3%
 原子力  19%        29.2%
  水力  17.3%       8.1%   
  火力  17.2%      24.7% 
 太陽光  3%         0.2%
 その他 10%         0.5%
我が国も、太陽・水・風・山・海など自然エネルギーに恵まれており、再生可能エ
ネルギーの利用への政策転換は緊急の課題であろう。(ガス・石油・ウランなど
のエネルギー資源の輸入は全エネルギーの約82%に達する)
原発のコスト試算は、どのような内容か計り知れないが、研究・開発費、特殊設備
費に加え安全管理組織の人件費、定期点検・保全費、安全対策費、立地自治体
への交付金、原発周辺の避難道路・設備、廃炉費用、放射性廃棄物の処理費用
、そしてフクシマの事故のような損害賠償・風評被害・除染費用など、火力・水力・
風力・太陽光に比較して、全く異なる要素があり、原発のコストは従来の設定コスト
の数倍となるのではないだろうか。

技術立国を自認している?この日本で、3.11のフクシマ原発事故は、いまだに
的確な解決策がないまま、無情にも時間だけが流れている。
想定外?(100%人間がもたらした過ち)の出来事とはいえ、万が一にでも大事故
が起こった後、打つ手がない未熟な技術では、国民は常に危険と隣り合わせで、頼
るべきものがない悲しさ。
首相官邸・経産省・文科省・東電は、津波到達から水素爆発までの初期段階での
連携が全く機能せず、また当事者たちは的確・迅速な対応力も欠如。これらの問
題は、「国民の安全を守る」ための「強い危機管理意識」の欠如に他ならない。
国・国民の安全を守るべき官邸が、このような大失態の対応では、将来起こるかも
知れない大規模な自然災害、武力衝突、人為的大事故など国家にとって非常事態
の際の危機管理はまことに心もとない。

原子力の安全に関連する組織は、報道されているだけでも安全保安院・安全基
盤機構・安全委員会・安全センター・安全庁などがあるが、この度のような事故防
止及び対策には全く機能しなかったのではないだろうか。「想定外」の言葉が飛び
かうばかりで、自己弁護と責任回避に終始し、真の原因究明とか安心できるに十
分な緊急・恒久対策が今もって見えてこない。
対策には技術的にも困難を伴う原子力の問題であるからこそ、特に安全・研究に
携わるプロの集団・組織は、現場の惨状、被災地の町並み、ふるさとを破壊され
また避難区域から疎開を余儀なくされている住民の現状を目に焼きつけて、徹底
した調査と対策に全員の英知を結集して貰いたいもの。

原子力関連に携わる研究者は日本原子力研究開発機構で約4000人(事務職員
を含む)、大学、企業、各研究所を合わせると、何万人の規模となる。この何分の
一かの人的資源と資金を太陽・風力など自然エネルギーの利用に転換すれば、ま
だまだコストパフォーマンスの優れた電力が賄えたであろう。少なくとも風力・太陽
光など再生可能エネルギーによる電力の供給は飛躍的に伸びる。日本の優れた
環境技術を世界に向けて発信し、強力な輸出産業にもなる筈。現状では、風力で
は実績・技術面でヨーロッパ勢に、また太陽光発電ではコスト面で韓国や中国に
苦戦をしている。

資源の乏しい我が国において、まして地震・津波などの自然災害のリスクが大きい
我が国の原子力発電、化石燃料による環境問題など考えさせられる、スペインの歴
史と人間の英知の見本でもある新旧の風車群。あらためて我が日本を見たとき、
安全神話のもとで拡大してきた原発問題は、代替エネルギーへの転換の緊急の必
要性と同時に、電力の消費構造についても国民ひとり一人の生活のあり方が問わ
れているようでもある。

日本の電力消費量はアメリカ、中国についで第3位。一人当たりの電力消費量は、
カナダ、アメリカ、韓国についで第4位、世界平均の約3倍、ドイツの113%、イギリ
スの130%。カナダは豊富な水資源で電力事情は良好。韓国については原価より
低い電気料金に設定しており、GDP比で見ても突出して高く、韓国開発研究院が問
題視している。(一方で、安い電気料金と法人税、FTAのメリットなどから日本企業
が韓国に工場を移転・建設するニュースも、最近、良く報じられている。企業が活性
化し雇用が促進されることは税収も増え、国・国民にとってメリットでもある。日本で
も大いに議論すべき課題)
(スペイン旅行で感じたままに)

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